宅建に合格したら、次の資格として、行政書士の資格取得を目指す方も多いですよね。
あるいは、何か資格を取りたいけど、宅建か行政書士かどっちがよいかな?と考える方も多いと思います。
今回は、宅建士試験と行政書士試験の難易度の違いについて、試験科目、出題範囲、勉強方法などについて、ご紹介いたします。
目次
行政書士と宅建士の合格率の比較
宅建士と行政書士とでは、どちらの方が、試験の難易度が高いのでしょうか。
まず、近年の受験者数や合格率を比較してみましょう。
宅建士の合格率
年度 | 申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
平成24年 | 236,350 | 191,169 | 32,000 | 16.7% |
平成25年 | 234,586 | 186,304 | 28,470 | 15.3% |
平成26年 | 238,343 | 192,029 | 33,670 | 17.5% |
平成27年 | 243,199 | 194,926 | 30,028 | 15.4% |
平成28年 | 245,742 | 198,463 | 30,589 | 15.4% |
平成29年 | 258,511 | 209,354 | 32,644 | 15.6% |
平成30年 | 265,444 | 213,993 | 33,360 | 15.6% |
宅建士の合格率は例年15%で推移しています。
行政書士の合格率
年度 | 申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
平成24年 | 75,817 | 59,948 | 5,508 | 9.19% |
平成25年 | 70,896 | 55,436 | 5,597 | 10.1% |
平成26年 | 62,172 | 48,869 | 4,043 | 8.27% |
平成27年 | 56,965 | 44,366 | 5,820 | 13.12% |
平成28年 | 53,456 | 41,053 | 4,084 | 9.95% |
平成29年 | 52,214 | 40,449 | 6,360 | 15.7% |
平成30年 | 50,926 | 39,105 | 4,968 | 12.7% |
行政書士の合格率は例年10~15%で、宅建の合格率に比べて、やや低くなっています。
合格率だけを比べても、行政書士の方が難易度が高いといえます。
ただ、受験者層が異ななりますので合格率だけで難易度を判断することはできません。
行政書士と宅建士の出題形式と問題数の違い
宅建士と行政書士とでは、どちらの方が難易度が高いのか?
次に、試験制度を比較してみましょう。
宅建士の試験科目
宅建士の試験時間は、1日(120分)で受験する試験です。
具体的な試験科目と問題数、配点は以下の通りです。
試験科目 | 出題形式 | 問題数 | 配点法規 |
---|---|---|---|
権利関係 | 4肢択一式 | 14問 | 14点 |
宅建業法 | 4肢択一式 | 20問 | 20点 |
法令上の制限 | 4肢択一式 | 8問 | 8点 |
税その他 | 4肢択一式 | 8問 | 8点 |
行政書士の試験科目
行政書士の試験時間は、1日(180分)で受験する試験です。
具体的な試験科目と問題数、配点は以下の通りです。
科目 | 出題形式 | 問題数 | 配点 |
---|---|---|---|
基礎法学 | 5肢択一式 | 2問 | 8点 |
憲法 | 5肢択一式 | 5問 | 20点 |
行政法 | 5肢択一式 | 19問 | 76点 |
民法 | 5肢択一式 | 9問 | 36点 |
商法・会社法 | 5肢択一式 | 5問 | 20点 |
憲法 | 多肢選択式 | 1問 | 8点 |
行政法 | 多肢選択式 | 2問 | 16点 |
行政法 | 記述式 | 1問 | 20点 |
民法 | 記述式 | 2問 | 40点 |
政治・経済・社会 | 5肢択一式 | 8問 | 32点 |
※年度によって配点が多少異なります。
行政書士試験の方が、出題形式が難しく問題数も多い
行政書士試験の出題形式は5者択一式、多肢選択式、記述式の3種類ありますが、宅建は4者択一式の1種類のみです。
宅建士試験の場合には、合計50問の出題数ですが、すべてが4者択一式のため、たとえ、当てずっぽうであったとしても全問解答が可能な試験です。
一方、行政書士試験は、合計60問の出題数ですが、1問に掛ける時間を単純に60等分した時間配分では、全問解答することはできません。
なぜなら、行政書士試験には、3問の40字記述式があり、理解と文章をまとめ挙げる力が必要だからです。
しかも、記述式3問は、得点配分が高く20点×3問=60点となっています。
行政書士試験には足切り制度がある
また、一般知識に、3問の文書理解が含まれており、時間が掛かる問題です。
さらに、一般知識には、いわゆる足切りの最低得点基準が設けられており、全14問中6問以上正解しなくては合格できません。
行政書士試験は、300点満点で、合格者の補正措置がない限り、180点以上を合格ラインとしています。
つまり、一般知識の足切り基準を満たした上で、全体の60%の正解率で合格できるのにもかかわらず、平均の合格率が受験者の10%前後であることから、行政書士試験の方が難しい試験といえるのです。
参考 行政書士の試験制度
勉強内容の違い
出題範囲を見ると宅建士試験の方が一見、広そうに見えますが、いずれの科目も基本知識しか出題されません。
宅建試験に比べて、行政書士試験対策は何が違うのか2つポイントを挙げると以下になります。
同じ民法でも出題範囲が違う
民法は、行政書士と宅建士試験で共通する法規ですが、宅建士試験の民放は権利関係に含まれる物権がメインで、債権や家族法、親族法は、ほぼ出題されません。
一方、行政書士試験の民法は、債権をメインとして、すべての範囲から出題されます。
条文のうろ覚えでは、解答することはできない
行政書士も宅建士も法規に関して学びます。宅建士試験は表面をサラッと学習するイメージですが、行政書士試験は、理解をする学習となります。
行政書士試験では、条文のうろ覚えでは、解答することはできないため、重要な条文は、一字一句、間違えないで覚える必要があります。
また、一般知識は、範囲があるようでないという掴みどころがなく、試験対策が困難な科目となっています。
学習方法の違い
出題形式も複雑化し、難易度も高い行政書士試験では、宅建の学習方法と比べて何が違ってくるのか、について紹介したいと思います。
既に、宅建士試験勉強でも対策をとっていたかもしれませんが...出題数が多く、合否を分ける可能性が高い科目を中心に勉強をするべきです。
具体的には以下が重要なポイントです。
行政書士試験は、行政法と民法がメイン科目
宅建試験では、権利関係と宅建業法がメイン科目でした。一方、行政書士試験の場合には、行政法と民法がメイン科目となります。
行政法は、過去問対策や丸暗記の勉強法がある程度、通用する科目ですので、試験日の3ヶ月前から、集中して一気に記憶する学習法で乗り切ることができます。
しかし、行政書士試験の民法で、暗記が通用するのは、条文と要件のみです。
民法は、暗記科目ではなく、理解をしていないと解答を導き出すことができません。試験日の7~8ヶ月前から、コツコツと時間を掛けて仕上げていく必要があります。
参考 行政法の勉強法
憲法の勉強には注意点
憲法には、大きく分けて、人権と統治の2つがあります。
人権は判例をもとにした理解が必要で、理解に時間がかかります。
一方、統治は、条文の暗記だけで解答できる問題が多いので、得点源にするためにも必ず暗記する必要があります。
参考 憲法の勉強法
毎日の学習のスタイルは、民法+他の科目
毎日の学習のスタイルは、民法+他の科目という方法がよいでしょう。
行政書士試験は、180点/300点で合格できるのですから、すべての問題に同じ時間を掛ける必要はありません。
つまり、絶対にとりこぼしてはいけない問題と捨て問題を瞬時に判断して、効率よく受験することが合格への近道となります。
参考 民法の勉強方法
合格までの学習目安時間
合格までの学習目安時間は一般的に、宅建士試験は300時間、行政書士試験は1000時間といわれています。
しかし、この学習時間も初学者なのか既修者なのか、集中して机に向かった時間なのかスキマ学習なのかで、まったく異なります。
また、このような学習目安時間は、資格予備校が発表しているものなので、効率よく勉強することが前提になっています。
実態としては、行政書士試験は宅建に比べて、5倍くらい難しいと考えておくとよいと思います。
行政書士試験の難易度については、別の記事に詳しく書いていますので参考にしてください。
参考 行政書士の難易度
両方取得するメリット(Wライセンスの相乗効果)
宅建士と行政書士とで、大きく異なるのは、取得後の資格の使い道です。
「不動産の商取引を行う事業者は、必ず事業所内に宅建の有資格者を、5人に1人配置しないといけない」という規則があるため、宅建士は、不動産関係の職種の就職に有利な資格となっています。
不動産業界では、人に出入りが流動的で、宅建士の有資格者の求人が多い傾向にあります。
参考 宅建士が人気な理由
一方、行政書士は、就職というよりは、独立開業に向いている資格です。
行政書士が取り扱える業種は、数えきれないほどあり、自分の得意分野で勝負することができます。
最終的には、Wライセンスの取得は、資格をとることだけを目標にするのではなく、取得後に、どのように生かすことができるか、明確な目的やビジョンを持つ人によい結果をもたらすことができるのです。